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ツイッターでまとまらないこと

240316はじめてのよあそび記録

・はじめに

YOASOBIのライブに行ったわけではなく、夜遊びの方である。漢字の方である。3月16日にティプシーという、レズビアンバイセクシャル女性限定のクラブイベントに参加した。そういうイベントも初めて、クラブに行くのも初めて、そもそも21時以降に外を出歩くことが滅多にない箱入り娘の冒険の記録としてこれをしたためたい。

 

・装備

黒のレース地に花の刺繍をあしらったワンピース。この服は見た目の華美さと着心地の良さが両立しているところがお気に入りである。短時間ならまだしも長丁場に可動域を狭める服を着るのは苦しい。

チャンキーヒールのメリージェーンパンプス。細いヒールは怖い、ストラップがないパンプスは高確率で脱げるというフォーマル適正が低すぎる女でもちゃんと歩ける靴である。世の中の女性は足が強すぎる。お洒落は我慢ということだろうか。正直あまり我慢はしたくない。

Loopというブランドのライブ用耳栓。これが最重要アイテムであった。私は爆音が苦手である。敬愛するアーティストのライブですら、地響きのような轟音が響き渡ると感動よりも恐怖が勝る。そんな人間の恐怖を良識的なレベルまで引き下げてくれるとても優秀なグッズだ。開発者に感謝。正直この耳栓をつけた上でも充分大音量だったので、耳栓が無かったらうるささのあまり早々に発狂&退場していたと思う。この爆音の中を裸の耳で過ごせる人間、耳が強すぎる。

 

・前準備

イベントは23時からだったので、その日の昼から夕方にかけて昼寝をした。疲労と睡魔は減らせるに越したことはない。

18時ごろに夕食を摂り、その後にコンサータという薬を飲んだ。この薬、一般的にはADHDの治療薬として使用されているらしいが、私にとっては多動というよりも日中の眠気を吹き飛ばしてくれるものという認識が強い。基本朝食の後に飲むもので、これを飲まないと私は夕方頃には撃沈してしまう。夕食後に飲むのはあまり勧められたものではないかもしれないが、おかげで夜中の間は一切眠気が襲ってこなかった。効果てきめんすぎる。

 

・イベント前

前述したようにイベントは23時からだった。しかし、私は20時には現場付近に到着してしまった。時間配分が下手くそにもほどがある。

3時間もの間そこらへんのベンチに座ってるのも味気ないので、周辺の夜の繁華街をぽつぽつと散歩していた。歩ける靴を履いていてよかった。

夜の街は新鮮であった。この時間でもこんなに明るくて、賑やかで、人々が活気づいているのだと初めて肌で感じたような気がする。もちろん知識としては知っているが、体感として知る機会がなかった。春の夜風はほどよく生ぬるくて心地よかった。煌々と輝く街灯の灯りが境目のくっきりとした陰影を作っていた。

この時間でも人々は活動をしていて、工事現場で働く人がいて、白木蓮も咲いたままで、歩くのに困らないほど明るいのだ。知らなかった、と思った。知っていたはずだけど知らなかった。この時間は私にとって夜で、即ち寝る支度をする時間で、一日が終わる時間だった。その時間でも一歩外に出てみればこんなにも世界が明るい。一日は私が思っているよりずっと長いのだと知った。

もっと早く知れていればと思った。酔っ払いの罵声に怯えながら無理に寝ようとしなくても、外に出ればこんなに明るくて清涼な空気が漂っているのだ。もちろん過去の私にとってまるで現実味がないことは分かっている。しかし一日は長いし、世界は広いのだ。一体何を囚われていたのだろうか。私は足枷の幻覚を見ていたらしい。目から鱗、ではないけれど、今更すぎる、遅すぎる気づきへの衝撃で少し涙が出た。

 

・イベント

初めてだから当然とはいえ、何も勝手が分からなくて困惑した。ある程度は想定していたとはいえ、目の当たりにするとまた違った実感がある。

最初は緊張していて何をどうすればいいか全く分からなかったが、周りの様子を見ていて結構自由に話しかけていいのだな、と分かった。そういうイベントなんだからそりゃそうなんだけど。

誰も知り合いがいないので、逆に旅の恥は掻き捨て感覚で話しかけることができた。そういうところは妙な度胸がある。自分でもそう思う。

いろんな人がいた。恋人を探しに来ている人、友達を探しに来ている人、何回も来ている常連の人、私と同じく初めての人もいた。年代も幅広い。話した中で一番若い人は19歳と言っていて、その年齢で自分のセクシュアリティを明確に自覚し、彼女が欲しい!と行動できていることに驚いた。一般的には当たり前なのかもしれないが、私はそこまではっきり自分の性志向が分かってない。女が好きな女の友達が欲しい〜と思って参加したが、彼女は5歳も年下なのにとっくに先へ行っている。

話は変わるが、『彼女が好きなものは』という映画がある。作中で神尾楓珠演じるゲイの主人公に当たり前のように既婚者のセフレがいる。当たり前のように描かれているので当たり前なのかもしれないが、高校生の段階で「性志向を自覚し」「それを受け入れ」「相手を探すための行動を起こし」「結果を出して」いることに対してすげえな……!?!と思ったものだ。それだけ彼にとって切実な問題だったのだろうと想像はするが、自分に置き換えると全く想像がつかない。彼と私は性別が違うし、性的欲求の強さも人それぞれとはいえ、高校生………高校生ぞ…………!?となる。

話を戻そう。最初こそガチガチのコチコチに緊張していたが、長く居座っていると顔見知りの人も増え、いろんな話も聞けて楽しかった。それぞれに事情は違えど、ここにいる人は全員「女好きの女」なんだな…と思うと不思議な高揚感があった。同性愛者・両性愛者への理解が進んできた昨今とはいえ、それはあくまで理解でしかなく、インターネット上以外で共感を求めることはなかなか難しい。しかしこんなに沢山いるのを目の当たりすると、こんなにいるんだな…という不思議な感慨があった。何もかも刺激的で、未開の地に足を踏み入れたような感覚だった。来てよかったと思った。ちなみに合計5人と連絡先を交換しました。結構すごくない?コミュ下手オタクにしては頑張ったと思わない?褒めていいよ

 

・イベント後

薬のおかげか眠気を感じることは全くなく、日が昇る前の早朝の街をまた歩いて帰った。相変わらず外は暗く、しかし街灯の光はぼんやりとしていて、人通りが少なくて、これはこれで別の街のようだった。時間帯によって街の表情が変わるという至極当たり前のことすら私には新鮮だった。無知が過ぎる。

シャッターの降りた商店街を歩く。ほとんど人がいない。ここなら踊っても多分誰も見ていないし、見ていたとして「踊っているな」としか思われないだろうな、と思った。踊らなかったけど。

始発電車で帰り帰宅すると猫が真っ先に気づき、ご飯及び愛撫を要求してきた。この子に夜という概念はないらしい。夜遊び用の華美寄りの化粧を落とし、布団に寝転んだ。外が明るくなり始めていた時間にどうにか寝ることができた。

 

・後日談

翌朝、というか昼にどうにか起きたものの、意識的な薬の飲み忘れにより頭がくらくらした。今日が休日でよかった。この状態で仕事などあっても何もできない。母も仕事が休みだったので、家事その他諸々の全てを母に押し付けてごろごろとしていた。頭は痛いが食欲はあったので、母謹製のクリームシチューを食べた。美味しかった。

夕食後にいつも通りのタイミングでいつも通りの薬を飲んだら無事体調が落ち着いた。慣れないことをするのはリスクが伴う。そして薬に生かされすぎている。メンクリ10年選手のため、今更嘆いても仕方がないが。

 

・まとめ

慣れないパンプスで30000歩歩くのはあんまり良くない。歩いている最中は楽しさで忘れていたが、帰宅した後まあまあ足が痛かった。調子に乗る勿れ。あと時間の3時間前に着くな。

次回があったらスニーカーを履こうね。過去の私との約束だよ…